映画「楽園」主人公の名前が「紡」である理由!ネタバレと斬新考察!

〜3月のご挨拶〜

令和2年になり早々、コロナウィルスで騒然としている日本列島。

3月に開催された日本アカデミー賞も、無観客で行われましたよね。

今回開催された第42回日本アカデミー賞は、映画「新聞記者」が受賞しましたが・・・。

実はノミネートに上がっていなかった作品の中に、「新聞記者」に匹敵、またはそれ以上に深くテーマ性を隠した映画がありました。

その映画は「楽園」

賛否両論・・・と言うよりも、今の所どちらかというと否が多いこの作品なんですが・・・。

とんでもなく素晴らしい作品である!と、断言したい作品でした!

今回は、そんなとんでもない感動作「楽園」のあらすじとネタバレ考察、そして杉咲花演じる主人公が、何故【紡(つむぎ)】という名前であったのか・・・という謎の解明について紹介します!

映画「楽園」のストーリーは?

〈引用:eiga.comより〉

今回紹介する映画「楽園」は、第34回日本アカデミー賞を受賞した映画「悪人」の原作者でもある作家、吉田修一氏の短篇小説が土台になっています。

そのタイトルは「犯罪小説集」。

〈購読・Amazonにて電子書籍より〉

映画「楽園」は、この小説「犯罪小説集」に収録されている「青田Y字路」「萬屋善次郎」を組み合わせてまとめられました。

私は映画の前に原作を購読していましたので、やはり表題が「犯罪小説集」というだけあって

「1つ1つのオムニバスによって、犯罪に至るまでのプロセスや心理が書かれているんだな」

と、いうことがわかりました。

しかし

「でも、何故この2作品を、あえて【楽園】としてまとめたんだろう?」

という疑問も、私の心に芽生えたわけです。

映画「楽園」の監督をつとめたのは映画「64」の瀬々敬久監督。

「これはきっと凄い作品に違いない!」

と、深夜から映画「64」の前編を観てしまったがために、徹夜してしまい、翌日後悔した私の勘が冴え渡りました。

で、映画「楽園」を観た結果なんですが・・・

最高に!素晴らしかったです!

土台となっている「青田Y字路」と「萬屋善次郎」の引き合わせ方は、ちょっと不自然なんですが、映画を見終わると、ある【大きなテーマ】に包括されるので、違和感がまったくなくなります。

このテクニックが素晴らしい!

「青田Y字路」と「萬屋善次郎」は、全くテイストがちがうあらすじなんですが・・・。

いったいどんなあらすじなんでしょうか。

~「青田Y字路のあらすじ」~

青田Y字路は、あおたのわいじろと読み、とある県にある田舎の村の道を表しています。

劇場ポスターより・架空の青田のY字路ここでアイカちゃんは失踪した〉

のどかな田園風景に囲まれて、1本道があり、青田のY字路を抜けると神社にでて・・・。

美しい風景ですよね。

映画「楽園」では、冒頭のこのシーンに「Ⅰ 罪」と、ありました。

Y字路から出る神社では毎年、夏に祭りが行われていて、この物語の主人公である【豪士タケシ】(綾野剛)は偽ブランドバックの露店の前に立っていました。

その露店はタケシの母のもので、弱いものイジメで「ミカジメ料をよこせ!」とヤ○ザが絡んできます。

暴力を振るわれる母、止めに入るタケシも殴られ、【村のお爺さん藤井】(江本明)が仲裁にはいり、ことなきをえました。

その日の夕方、懇意になったタケシに、藤井は就職先を世話する約束になっていたのですが・・・。

6時になっても藤井の孫娘、【愛花アイカ】が帰ってこない!と連絡があるのです。

アイカの最後の姿を見たのは、友達の【紡ツムギ】だけ。

2人は学校の帰り、青田のY字路でいつものように別れた・・・ということだったのです。

捜索の結果、アイカのランドセルだけが発見され、それから12年がたち・・・ツムギ(杉咲花)も大人の女性に成長していました。

と、いうストーリーなんですが、このアイカの最後の姿を見たツムギは

自分のせいでアイカは殺されたんじゃ・・・。

と、大人になっても自分自身を責めながら生きています。

藤井からは「お前だけなんで生きてるんだ!」という態度をとられ、さらにネガティブになるツムギ・・・。

この物語は、実際にあった北関東連続幼女誘拐事件がモデルとなっています。

そしてこの誘拐事件が、集落が舞台なった「萬屋善次郎」とどう絡んでくるのかも気になりますよね。

~「萬屋善次郎」のあらすじ~

田舎の集落に、都会から来た善次郎。

彼は田舎に残された父の介護のために戻って来たのです。

都会では工場に真面目に勤務し、パン屋の娘で犬好きな女性と結婚。

しかし田舎に来る前に、妻は病気で亡くなってしまうのです。

介護していた父も亡くなり、天涯孤独となった善次郎。

養蜂で作った蜂蜜での収入で、ほそぼそですが生計をたて、愛犬のレオと仲良く暮らしていました。

高齢者の集落では、まだ60代で若い方の善次郎は、色々な家庭の修理のお手伝いなどもしていました。

それでついたあだ名が【萬屋善次郎】。

しかし善次郎が集落のお婆ちゃんたちに人気が出たことによって、物語はとんでもない方向に転げ落ちていくのです・・・。

この2作品をどう繋げるかがポイント!映画「楽園」の目的は?

※ここから映画「楽園」のネタバレになりますので、ご注意ください。

この映画「楽園」は、タケシを演じる綾野剛が主人公といわれていますが、実はタケシは映画が始まって30分後くらいに死んでしまいます。

〈引用:eiga.comより〉

ポスターにあるように、綾野剛、杉咲花、佐藤浩市がそれぞれ業を抱えながら生きていく・・・というトリプル主演の形です。

映画「楽園」では、「青田Y字路」での12年後に「萬屋善次郎」が絡んでくる作りになっています。

いったいどの部分で【善次郎】が登場してくるのでしょうか?

そして、何故タケシは死んでしまうのでしょうか?

そして、物語は、善次郎が主人公になるエピソード・・・【Ⅱ 罰】というタイトルの章に移行します。

手作りのハチミツで村おこしをしようとした善次郎。

しかしそのことが原因で、ひどい村八分にあい、愛犬のレオとともにひきこもり・・・。

最後は不可解な?事件が起こってしまうのです。

映画「楽園」の隠されたテーマとは?主人公の名前にヒントが

この映画の章、【罪】【罰】に引き続き、3番目の章として【人】というストーリーが始まります。

この章では【ツムギ】が主人公となり、タケシの事件を調べるようになるのです。

【罪】【罰】【人】からなる映画「楽園」を斬新に考察!

上記で書いたように、この映画「楽園」は

タケシの章・・・罪

善次郎の章・・・罰

ツムギの章・・・人

と表すことができます。

ラストでツムギがアイカと別れたY字路で、藤井が置いている「不審者注意」の看板を空き地に捨てました。

しかし藤井に見つかってしまったので、今度は藤井が拾えないように橋の下に落とします。

つまりツムギは、無言で藤井に抵抗したのです。

藤井が無言で看板を掲げる行為が、ツムギに対する【抗議】だった・・・だからツムギも行動で【抗議】したのです。

このシーンは、責任を感じながらでも生き残ったツムギには「人として幸せを追求する」権利がある・・・という主張に私には感じられました。

その後、ツムギはアイカと別れたあの日あの時を思い出します。

アイカと別れる前に、ちょっとしたことで口論になり、アイカの誘いを断ってしまったツムギ。

その口論はアイカの何気ない意地悪が原因でした。

だからツムギはアイカを1人にしてしまったのだと思います。

ラストで対局の2人の行動が表すテーマとは?

この「楽園」という映画で、タケシと善次郎は「真逆の人間である」ということがわかりました。

タケシがツムギに【楽園】について呟くようなシーンがありました。

しかし善次郎はタケシとは対照的だったと思います。

ではタケシはどうでしょうか?

もしかするとタケシは、アイカちゃんに「楽園を見せてほしかった」のではないでしょうか?

しかし意地悪なアイカちゃんはタケシを気味悪がったのかもしれません。

タケシのような20代の青年が、子供に依存したくとも、子供には青年の寂寥感までもは察することができないのですから。

そして、これらの事件を通じ、ツムギの心の中に、【楽園】を作り出すパワーが育ち始めたように思いました!

つまりこの映画で言う【楽園】とは、タケシが期待する「誰かが用意したもの」ではなく、人と人がひとつずつ信頼を【紡いでいく】ものなのではないでしょうか?

しかし善次郎のように【楽園】を見せびらかすと、嫉妬される・・・そんな危ういもの、それが楽園であると、この映画で伝えられた気がしました。

アイカちゃんがツムギと口論したときに、心から謝っていれば・・・あのY字路までの田園の帰り道。

あの時の時間が、2人の「楽園」へのピースを見つけるチャンスだったのです。

まとめ

今回は映画「楽園」のあらすじとネタバレ、考察と隠されたテーマについて深堀りをしてみました!

瀬々敬久監督の演出した、善次郎の登場の方法は唐突でしたが、原作を壊さないためにそうしたのかな?とも受け取ることもできますよね。

見方によっては、あの【Y字路】を境界として、町と集落を【パワレルワールド】のように繋げたようにも感じました。

人が人を大事にして、楽園は作られていく・・・なんて光温かいテーマを隠し持った作品でしょうか。

あの「犯罪小説集」を見事に演出した映画「楽園」。

次回の瀬々敬久監督の映画「糸」も、楽しみに待ちたいですね!

Hits: 42589

投稿者:

ロージー 谷

コラムニスト/栄養士 映画評論家・美容家・翻訳家

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です